55-4-5(チェスという思想4 99/11/1)



 ジュリア・クリステヴァは懐かしいあの書物『セメイオチケ』(大学時代から線を 引っ張ったまま、ついに今日になるまで引用することがなかった。素朴に今、うれし い。とうとう僕はこのことについて書いているのだ!)で、ソシュールのアナグラム について縦横に語っている。彼女はアナグラムを“多価的”であるといい、パラグラ マチックと名づけた。
 しかし、クリステヴァはチェスに言及しない。
 そして驚くべきことに「合わせて六四の区画を形成するパッセージ」として中国の 易を援用し、卦に関連させて「数学的操作としての言語活動の普遍代数」を語るので ある(『セメイオチケ』「パラグラムの記号学のために」せりか書房)。
 六四の区画。
 それはむしろチェスである。
 だが、彼女があえてチェスへの言及を避けたことこそが、チェスと易の共通性を示 してはいないだろうか。

 白と黒、すなわち光と影。
 チェスもまた、光と影のゲームなのだ。

 陰陽の思想は西洋においてチェスとして存在していたのかもしれない。
 8×8
 秘数チェス。


    



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