55-8-6(透視図に関する三つのルネサンス文書 3/5/2001)



 さて、アイヴァンスの『On the rationalization of sight』をいったん「見えるものの理性化」と邦訳 した上で、その構成をかいつまんで書く。  表題の短い論文に引き続いて、副題でもある『THREE RENAISSANCE TEXTS ON PERSPECTIVE』が展 開するのだが、問題のノゾキ箱が出てくるのがこの論文中である。  そこで、この「透視図に関する三つのルネサンス文書」を急いで訳してみようと思う。  こちらは遠近法に無知であり、まともに美術史も知らない。とんちんかんなことになるとは思うが、わか らない部分は英語も載せておくので、是非御教示願いたい。  まず、第一節は以下のようになっている。

『透視図に関する三つのルネサンス文書』

1  ルネサンス期において、透視図に関する特筆すべきテキストは、アルベルティ、ヴィアター、デューラーに よるものだということは衆目の一致するところである。  一般に、アルベルティが1435年から1436年にかけて書いた「Della Pittura libri tre」(#イタリア語の 意味、年代からして日本で訳されている『絵画論』と思われる)は、透視図の概要を最も早い時期に論理的に 矛盾なく、適正な図によって表現したものとされる。アルベルティの作図はのちのイタリア芸術家によっても 利用され、「costruzione legittima 正統なる図」の名で知られている。  ヴィアターの著作「De artificiali perspectiva 人工的な透視法」は、1505年にトゥールで出版され、 1509年にはニュレンブルグで海賊版が出されたのだが、我々になじみ深い「三点」や「距離」といった方法 論を最初に指摘したのがこの本である。  デューラーは「Unterweysung der Messung 」(#私のドイツ語辞書にUnterweysungが載っておら ず、ここは飛ばします。Messungは測定のこと)を1525年に出し、幾つかの世代にわたってドイツで最も進 んだ権威となったのだった。  透視図において何よりも簡素な問題形式は、ひとつの正方形(#もちろん、この「square」はチェス用語 でマスである)をどのように幾何学的に正しく投影させるか、である。  これは幾何学的な光学の上での問いであって、生理学な光学や心理学の問題とは違う。その解は慣習的に得 られると受け取られがちだし、「リアリティ」として大きな効果を持ち、非常によく見慣れた実際的な問題と 思われがちなのである(#上の二行、自信ありません)。  アルベルティとヴィアターは別の方法で全く同一の結果を導き出したのだが、それは幾何学上、原理的な論 理によって証明されるものだ。二つの図を1と2に示した。

図1 アルベルティの作図(図44)



図2 ヴィアターの作図(図45)




 BCは投影された正方形の近い側の線(near side)。消失点AはなんにせよBCの上にあり、見ている者の目
の上、正方形の平面の上に位置する。投影された左右の端はCAとBAとなり、DAはBCと平行関係にある。
 アルベルティのシステムにおいては、垂直線はBを通り、E点でDAと交わっている。アルベルティ法ではD
点E点の間の距離、ヴィアター法ではD点A点の距離が、正方形の近い側の線(near side)と見ている者の距離
に等しい。
 アルベルティ法においては、正方形の四つ目の線(fourth side of the square)の投影は、DCの線がどこ
で垂直線BEを横切るかによって決まる。
 ヴィアタ−法においては、DCがBAと交わる点によって求められる。
 興味深いことは、A点はどこであれDAの上にあればいいのだが、C点B点の上で中心を取る必要がないこと
だ(#?)。この事実のゆえに、正統なる図と距離の作図はBAとBEがたまたま一致したとき、見せかけの完
ぺきな相似性を持つ。


 (このあと、2に続く)




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